乳首が痛い~痛み・疲れの無い「効果的な授乳」とは? 助産院 北野ミッドワイフリー ブログ, 母乳育児

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痛い痛い陣痛や帝王切開手術を耐え抜き、ほっとしたのもつかの間、授乳がこれ程苦痛だなんて知らなかった、と言うお母さんはとても多いです。特に赤ちゃんが吸い付くたびに乳首に激痛が走る、血豆ができた、ひび割れになった、真っ赤に腫れ上がった、などなど。これはひとえに赤ちゃんが乳首を深く正しく吸っていないことが原因です。

「痛み」とは、そのままにしておくと深刻な問題があることを体の持ち主に知らせてくれるために備わった私たちの体の機能です。つまり、授乳に痛みがあるとき、その授乳は深刻な問題をはらんでいます。それは、赤ちゃんが正しく吸っていなくて、このままでは母乳が分泌されにくい、そうしたら赤ちゃんがちゃんと育たないかもよ、と言っているのです。多くのお母さんは、どれだけ乳首が痛くても、「私が我慢すれば」と思ってしまうのですが、結果として母乳分泌不全、つまり母乳が十分に出なくなることにつながります。

赤ちゃんが乳首に吸い付くと、刺激がお母さんの脳に伝わって、脳から母乳を出すようにと乳房に指令が返ります。乳輪の下には筋肉があって、授乳中に何度もおっぱいを吹き出させてくれます。これを射乳反射と言います。
射乳反射を起こしているのがオキシトシンというホルモンですが、オキシトシンはストレスに弱く、痛みを我慢しながらの授乳では、射乳反射がうまく起きないのです。
痛くない授乳をすることは、お母さんだけのためでは無く、赤ちゃんのためでもあります。痛くない授乳こそが「効果的な授乳」です。

では、どうすれば?大事なことは、赤ちゃんに乳首を深く正しく吸わせることです。
指で乳首をつまんでみてください。いわゆる乳首、ポチッと出ている部分は抓むととても痛いですよね?そして、乳輪と呼ばれる乳首の周りの色がついた部分は抓んでも痛くないでしょう?そこが本来赤ちゃんが吸い付く場所です。そして、その2カ所は、抓んだときに出てくる母乳の量も格段に違います。ほんの数ミリ深く吸わせただけで、痛みも傷の付き方も母乳の出る量だって、全然違います。

正しい吸い方

乳首だけで無く、乳輪まで深く吸っている。痛くない。口角が開いて口が「あ」の形に開いている。上下の唇の赤い部分が外に出ている。授乳後、乳首が丸い形を保っている。

浅い吸い方

乳首の出ている部分だけを吸っている。痛い。口角が閉じ気味。上下の唇が口の中に巻き込まれ、「吸いダコ」ができる。
授乳後、出てきた乳首がいびつな形になっている。


では、赤ちゃんと一緒に、効果的な授乳にトライしてみましょう。

1.正しく抱く(ポジショニング)

まず、赤ちゃんを正しく抱きましょう。吸わせる方と反対の乳房の下に、赤ちゃんのお腹がピタッと張り付くように、赤ちゃんの体をお母さんのお腹に巻き付けるようなイメージで抱え込みます。すると、赤ちゃんの顔が吸わせる乳房に真っ直ぐ向かい合うはずです。
赤ちゃんのお腹が上を向き、顔はおっぱいに向いていると、赤ちゃんの体は捻れてしまって、授乳している間に真っ直ぐに戻ろうとするので、乳首が引っ張られて傷つきやすくなります。また、首が捻れていると口が大きく開かないので、浅い吸い方になりやすのです。
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赤ちゃんの耳と肩先と腰が一直線上に並ぶように抱きましょう。
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赤ちゃんの顔が乳房の正面に向くように
赤ちゃんの顔が乳房の正面に向くように

また、お母さんの姿勢・授乳する場所も大切です。授乳クッションや背もたれ、足置きなど、お家にある物で工夫して、赤ちゃんの重みを預けたり、お母さん自身がリラックスした姿勢を保ったりして、肩こりや背中の痛みを防ぎましょう。



2.乳首に赤ちゃんの鼻を近寄せる

吸い付かせるとき、大抵のお母さんは赤ちゃんの唇を乳首に寄せます。すると、赤ちゃんは唇で乳首の先からたぐり寄せるように吸い付きます。この動作自体が痛みの元になりますし、往々にして浅い吸い方に収まってしまいます。
まずは、赤ちゃんの鼻先に乳首が来るように近寄せてみましょう。すると、おっぱいの匂いにつられて赤ちゃんが縦に大きく口を開けてくれます。赤ちゃんが十分に口を開けたその時に、素早く引き寄せて吸い付かせると、深く咥えさせることができます。

3.乳首が長いとき

乳首が長めでどうしても先にしか吸い付かないときは、乳首の根元に指を添えて、赤ちゃんの鼻先に乳首をつり上げるようにし、乳輪の下側を赤ちゃんの口の前に持ってきます。吸い付かせたいのは、乳首では無くて、この乳首の根元です。赤ちゃんが大きく口を開けた時に、添えた指ごと咥えさせるつもりで、グイッといっぺんに押し込んでみてください。乳首の先が最後に入る、つまり乳首を畳み込むように入れると、とても深く入ります。

赤い斜線の入っている部分が、一番吸い付かせたい部分です。
赤い斜線の入っている部分が、一番吸い付かせたい部分です。

4. 吸い付かせてから吸い方を深くする方法

赤ちゃんが吸い付いたとき、赤ちゃんの口角が開いているか、唇がどうなっているか確認しましょう。口角が開いて「あ」の形に口が開いていれば大丈夫です。また上下の唇の赤いところが見えているのがベストです。もしそうなっていないとき、赤ちゃんの顎にお母さんの親指か人差し指を引っ掛けて、赤ちゃんの胸の方にグイッと押し下げてみて下さい。口角が開いて乳首が楽になります。上の唇が巻き込まれているようなら、赤ちゃんの鼻の下を左右から摘まみあげるようにすると出てきます。


深く吸わせると、乳首の痛みが無くなるのと、授乳直後に乳首が円い形を保って口から出てきます。もしも乳首が潰れたり歪んだ形に変わっていたり、折り目のような筋が付いているときは、痛みは無くてもまだ吸い方が浅いのです。1-4のステップを一つ一つ確認して改善していきましょう。「痛くないこと」「出てきた乳首が円いこと」の、二つの結果にコミットしていくと、段々理想に近づいてゆくはずです。


すでに乳首に傷(乳頭亀裂)がついてしまったときの対処については、「乳頭亀裂(ひび割れ)」の記事をご参照ください。

また、吸いながら赤ちゃんがウトウトして、もう良いかなと赤ちゃんの顔を遠ざけようとすると、途端に一生懸命吸い始めてきりが無かったり、そのせいで乳首に傷がついたりします。
生まれてすぐの赤ちゃんには「お腹がふくれた」ということを関知する食欲中枢というものがまだ働いていないので、十分飲んでもいつまでも吸い続けようとします。赤ちゃんにとっては至福の時間ですから、お母さんが付き合ってあげたければそうしても良いのですが、乳首に痛みがあるようなときは後々のトラブルの元になるので、ウトウトしてきたら授乳を切り上げましょう。痛くないように乳首を離すには、赤ちゃんの口角にお母さんの指を差し入れ、乳首の幅まで指が入ってから乳首を抜き取るようにしましょう。

射乳反射を起こしているオキシトシンは、陣痛を起こしているものと同じですから、射乳反射は陣痛と同じように波状に起こります。大抵は赤ちゃんに吸い付かせて1分以内に最初の射乳反射があり、数十秒でおさまり、1分ほどでまた始まり、を繰り返します。最初の射乳反射が最も強く、沢山の母乳が出て、回毎に弱くなります。最初の2-3回ほどの射乳反射(5-7分程度)でその時に出るほとんど(8割以上)の母乳が出てしまい、以降は長く吸わせていても授乳量はほとんど増えません。後は赤ちゃんがチュクチュクするのを楽しむ時間で、吸うのが下手な子に吸い続けさせると乳首の負担を増やすだけになります。
射乳反射の出方は乳腺の働きが良くなるに従って早くなりますから、産後半月-1ヶ月以降には3分ほどの授乳で充分になってきます。

「だけどおっぱいあげてないと泣いちゃうんだけど」と言う方は、「母乳が足りない?~生まれてすぐの赤ちゃん」の記事をご参照ください。

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